冒頭の“リヴィング・フォー・ラヴ”は、“ライク・ア・プレイヤー”を思わせるゴスペル風のクワイヤーをフィーチュアしたソウルフルな曲だが、この曲を始めアルバムはいつになくメランコリックでもの悲しいメロディが際立っている。“リヴィング〜”では「愛よ、私を立ち直らせて」と歌われるが、アルバムは失恋の痛手からひとりの女性が立ち直っていくプロセスを描いたもののようで、波瀾万丈の末、ストリングス・オーケストラを配した感動的なバラード“メシア”でクライマックスを迎え、軽快なフォーク・ロック“レベル・ハート”で終わる物語は、一編の映画を観るようである。
本来は歌一本で勝負するタイプではなく、コンセプトの巧みさ、最新のダンス音楽の潮流を取り入れたカッティング・エッジなサウンドとヴィジュアル等さまざまな仕掛けの合わせ技で戦ってきた人だ。だが本作で最後に際立つのは、マドンナのヴォーカルに漂うある種の切迫感と緊張感だ。本作が彼女の実体験に基づくのかわからないが、久々に彼女の体温が生々しく感じられるアルバムであることは確かである。(小野島大)