極端から極端へ

ザ・ストリーツ『エヴリシング・イズ・ボロウド』
2008年11月26日発売
ALBUM
ザ・ストリーツ エヴリシング・イズ・ボロウド
ワーキング〜ロウワー・ミドルクラスの平均化された人生を、辛辣かつストリートワイズな言葉とビートで繋いで絵巻物語にしていく。ストリーツが編み出したそんなポップ・ソングの手法を嗜虐のセンスで言ったら世界一の英国人が熱狂的に愛したのも当然で、彼は一気にUKポップ・スターの頂点を極めることになった――これが2ndまでのストリーツの栄光の軌跡である。対して前作がいまいち英国民に受けなかったのは、嗜虐が向けられた先がスキナー自身の特殊な人生に絞られていたからだろう。英庶民からしたら「お前のセレブ・ライフの苦悩なんて知らねえよ」という話だったのある。

そして本作である。マイク・スキナー=ストリーツの因果関係を整理し、セルフ・プロデュースのギミックを廃し、ロバート・ワイアットとの邂逅をも経て生まれた本作において、歌われているのは前作と真逆の極端に普遍的な人生である。彼の手法を継承したリリー・アレンやジェイミーTが歌う等身大のセルフ・ライフストーリーとも全く異なるそれは、誰のものでもあり、同時に誰のものでもない、哲学的なまでの普遍性である。凄いとこにきちゃったな。(粉川しの)
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