スペース・ロック、ネオゲイズ、チルウェイヴ等々2010年代サイケデリック・ポップの諸相は多岐にわたるが、そのアイコンとしてテーム・インパラは目覚ましい躍進を遂げてきた。前作『ローナイズム』の世界的ブレイクを経て正念場になる本サードだが、いまや看板となったディストーションやリヴァーブの雲母がたなびくサイケ~プログレ志向を振り払い、ここではモダンなR&Bミニマリズムやエレクトロ、ディスコの意匠に取り組んでいる。ウォール・オブ・サウンドやエフェクトで感覚をワープさせるのではなくアレンジやメロディの美を前面に押し出したこのアプローチは、彼らにエピックなジャムを期待する向きは「否」を唱えかねない。しかし『ローナイズムPt.2』とは異なる道を選んだ大胆さは評価すべきだし、昨今溢れ返っている80年代風シンセやビートをモロに引用した安直なディスコ・ポップ=パロディに陥ることなく、中心人物ケヴィン・パーカーの感性を通して丁寧に取捨択一されたサウンドはテーム・インパラ流の微熱を帯びた甘いダンス・ポップを生み出している。見事な進化作にして、今年必携のサマー・アルバム。(坂本麻里子)