さらなるうたの深部へ

ベン・ワット『フィーヴァー・ドリーム』
発売中
ALBUM
ベン・ワット フィーヴァー・ドリーム
31年ぶりの歌ものソロ作『ヘンドラ』から、わずか2年。サマソニでのライヴの記憶も新しい中、早くも新作が登場した。モチヴェーションの高さを感じる。イワン・ピアソンのプロデュースだった前作に対して、今作はセルフ・プロデュース。前作、続くツアーでも行動を共にしてすっかり相棒としてお馴染みになったバーナード・バトラーは今作にも参加。マーティン・ディッチャムなど親しい仲間を迎えたセッションには非常に親密な空気が漂っていて、31年ぶりに歌った緊張感が多少なりともあったはずの前作よりも、さらにリラックスした素に近い姿が聴ける作品と言えるだろう。

とはいえアルバム全体のトーンは前作と比べるとややダークで、そこにはベンのプライヴェートな事情が反映されてもいるようだ。前半部はニール・ヤングを思わせるような重く歪んだギターが沈潜していくような曲が中心で、後半に行くにつれ霧が晴れるようにシンプルでポップな楽曲が増えていく。アメリカの女性歌手メリッサ・ナドラーがデュエットで参加したアコースティックな終曲は深い余韻を残して終わる。美しく、ニュアンス豊かな佳作。(小野島大)
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