ポール・エプワースに見初められて頭角を現したオックスフォードの4人組。そのエレクトロニックをベースとした折衷性の高いサウンドは、00年代末のUKの「ニュー・エキセントリック」勢を思わせるところがあった。カニエやヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響を公言し、アニコレからフライング・ロータスまで引き合いに出されたデビュー・アルバム『ザバ』。が、よりモダンでアップデートされた印象を与えるのはビートや音響に対する感覚で、低音の強調された処理や空間を活かしたプロダクションに窺えるセンスはやはり10年代ならでは、だろう。
2作目のニュー・アルバム。そういう意味では、キャッチーでトライバルな空気も含んだリード曲M1よりも、R&BやハウスのロウでメランコリックなムードをたたえたM3以降の流れこそ今作の本髄にふさわしい。強かだが沈み込むように打ちつけるビート。ミニマル感を意識させつつも、サイケなアレンジやサンプリング/8ビット音も使った耳愉しさ。そしてデイヴ・ベイリーの艶っぽい歌声。昨年のプティ・ノワールのアルバムも連想させる、美しく洗練されたダンス・ポップだ。(天井潤之介)
洗練された折衷主義のカタチ
グラス・アニマルズ『ハウ・トゥ・ビー・ア・ヒューマン・ビーイング』
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