パンク以前のロックの到達点、ロックの器楽的なアプローチでは未だ最高峰とも言える圧倒的にソリッドなインタープレイの凄さは今さら強調するまでもないが、5.1チャンネル・ヴァージョンの印象はオリジナル盤とはかなり異なる。特に冒頭の2曲“レッド・ブーツ”と“カム・ダンシング”は、ギターのフレーズから楽器のバランスからリヴァーブのかけ方から、笑っちゃうぐらい違う。それ以外もマルチ・チャンネル化することで各楽器の分離が良くなり、フレージングや音色などがよくわかる。
これを聴いてオリジナル2チャンネル・ステレオ・ミックスの圧倒的な完成度の高さを再確認した。マルチ・チャンネル盤は、それに比べると少しバランスが悪いが、だからこそ制作者の遊び心のようなものがうかがえて興味深い。(小野島大)