そもそもナイトウォッチマンというのは、レイジを失い、オーディオスレイヴでは表立って政治的な姿勢を示せなくなったトム・モレロが、自分の中の表現バランス/精神バランスを保つために始めたものだというイメージが強く、正直に言って当初はあまり魅力的なアイデアとは思えなかった。しかし、今年の初めに来日公演を見て印象は激変。「レイジのライブが暴動なら、こちらは青年団の集会みたいなもんだろう」と思って観に行ったのだが――そしてそれは大きく外れてもいなかったのだが――ソロ・アクトとしてのトムのポテンシャルは予想以上に高いことを実感させられ、すっかり唸らされてしまった次第だ。
よって、この2ndは、前作とは全く違った心構えで向き合い、その魅力を十分に受け止めることができた。クラッシュ経由なのか何なのか分からないが、北方系の民族音楽のテイストがいっそう強く表れていることには、ちょっと不思議な感覚も覚えるが、トムの素朴な声や歌詞の内容にはよく合っていると思う。これを聴いてもまだピンとこない人は、次こそ生演奏を体験してから聴き直すのがいいでしょう。(鈴木喜之)
新政権になっても歌い続けろ
ナイトウォッチマン『フェイブルド・シティ』
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