本格ブレイクの予感

テンプルズ『ヴォルケーノ』
発売中
ALBUM
テンプルズ ヴォルケーノ
3年ぶりの2作目。驚くほどポップになった新生テンプルズである。

ファーストで彼らが目指していたのは、60年代のオリジナル・サイケやフォーク・ロックの現代版であった。繊細な12弦ギターのアルペジオと、メロトロン風のキーボードの響き、ノスタルジックなメロディ、律動的なハンマー・ビートが鳴り響くクラウトロック風、エキゾティックなインド/アラブ音楽風まで、その音楽性にはブレがなかった。ただの過去のなぞりに終わらないのは、サイケ特有の浮遊するような空間感覚を残しながらも、クリアで分離のいい録音の新しさゆえだ。

そしてこのセカンドでは、そうしたファーストの美点を残しつつ、より繊細でメロディアスな叙情性が前面に出ていて、さらに甘酸っぱくポップに、キャッチーになった楽曲が際立つ。80sネオサイケや90sギター・ポップにも共鳴する明快なポップ・ソングが並ぶ。レトロというより、モダンでスマートな音楽センスを感じさせもする。そのぶんダークさやミステリアスさは後退したものの、本格ブレイクの予感が漂う本作の登場で、彼らの先行きが非常に楽しみになってきた。(小野島大)
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