期待を超えるための信頼感

ジャミロクワイ『オートマトン』
発売中
ALBUM
ジャミロクワイ オートマトン
2010年リリースの前作『ロック・ダスト・ライト・スター』のワールド・ツアーは4年以上に及び、彼らが今でも大きな支持を集め続けるグループであることを証明した。来日は2012年のサマソニのみだったため、大阪公演キャンセルは返す返すも残念だ。新作『オートマトン』のツアーは、5月に日本から始まる。即日完売を受け追加公演も組まれる盛況ぶりで、さすがは一時代を築いたグループと言えるだろう。しかし、バンドのモチヴェーションを維持する上でも、作品で結果を残すことは大切なはずだ。前回のUK7位という結果はジャミロクワイにしては今ひとつなもので(十分凄いが)、彼らはじっくりと時間をかけ、今日のジャミロクワイはどうあるべきかを練り上げてきたのだろう。ミニマルなエレクトロと手を取り合ったリード曲“オートマトン”やオープニング曲の“シェイク・イット・オン”。狂おしく悩ましい“スーパーフレッシュ”やブリージンな“サマー・ガール”では滑らかさの中にもメロディのフックが研ぎ澄まされ、80年代プリンスを彷彿とさせる“ナイツ・アウト・イン・ザ・ジャングル”もある。情報量は膨大だけれども、重要なのはすべての楽曲がスタイリッシュに纏められているという点だ。この粋な洗練こそが、ジャミロクワイの本質だということを打ち出したアルバムなのである。手癖ではなく、発見され自覚された個性。これこそが、アシッド・ジャズのムーヴメントから抜きん出たジャミロクワイの魅力だった。優れた職人芸のように、機能的でありながらも鮮烈な一枚だ。(小池宏和)
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