鮮やかにイメージを裏切るバンド
アルト・ジェイ『リラクサー』
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ALBUM
デビュー時には新世代フォークとダブステップの融合と評され、前作は来日経験がもろに反映されエキゾな作風となった、英リーズ出身のバンド=アルト・ジェイによる新作。アーシーなリフレインの中からハーモニーを立ち上らせる先行シングルの“3WW”や“アデリン”がある一方で、驚くほどソリッドなロックの手応えを残す“イン・コールド・ブラッド”(野ネズミの行動を追うMVではイギー・ポップがナレーションで参加)や、日本語の台詞が挿入された“ヒット・ミー・ライク・ザット・スネア”といった楽曲もある。表現がより開放的かつ率直になったぶん、このバンドの美しく暴力的な一面や変態性が剥き出しになった気がする。彼らの作品に触れて、「面白い」という以上に「かっこいい」と感じられたのは本作が初めてだ。幽玄のハーモニーに包まれる“ラスト・イヤー”にはフォーキーな女性パートのリード・ボーカルが盛り込まれており、圧巻のフィナーレ“プリーダー”へと向かう。魂の彼岸に渡るギリギリのところで「こちら側」に踏み留まり、ただ一方的に音楽の陶酔感に溺れることを許さない、そんな意思を帯びた全8曲だ。(小池宏和)