全作詞:
いしわたり淳治/全作曲&プロデュース:滝善充という布陣で作り上げた、菅原卓郎ソロ名義のオルタナ歌謡コンセプトアルバム――というよりは、メタル×ハードコア×オルタナと歌謡テイスト漂うメロディが渾然一体となった
9mm Parabellum Bulletの音楽世界から歌謡魂を丁寧に遠心分離&抽出して菅原卓郎の妖艶かつアンニュイな歌声に託したポップかつ実験的な1枚、という方が近いと思う。沢田研二“カサブランカ・ダンディ”を彷彿とさせるサウンドと《テキーラで喉を焼いたら/真実しかもう言えない》といったミステリアスな詞世界が絡み合う“ボタンにかけた指先が”あり、ぜひともアン・ルイスと共演してほしい80年代ロック感満載の“Baby どうかしてるぜ”あり……といった今作ならではの突き抜けた歌謡曲炸裂感も大きな魅力ではあるが、それこそタイトル曲“今夜だけ俺を”やラウド歌謡バラード“悪女”といった9mmワールドに限りなく漸近線を描くような楽曲群は、菅原&滝というコンビネーションのキャパシティの広さと音楽的な禁じ手のなさを改めてリアルに物語っている。(高橋智樹)