SpotifyやApple Musicのおかげで、聴ききれないくらいの新譜と出逢える昨今。限られたお小遣いで厳選したレコードを買っていた子供時代からすると夢のようだが、実際には楽曲単位では印象には残っても、アルバムをじっくり聴くに至らず、時にはアーティスト名すらおぼつかないことも多い。そんな自分が久々に衝撃を受け、その名を強烈に刻み込まれたのが、このコロンビア生まれで現在24歳のアメリカ人女性、カリ・ウチス。LAのヒップホップ・クルー「オッド・フューチャー」の主宰、タイラー・ザ・クリエイターとの絡みでその名前を知ったのだが、タイラーと言えば、エヴリシング・バット・ザ・ガールなど意外なミュージシャンを愛好する姿をSNSで披露していることからもわかる趣味の良さ、分け隔てない感性も魅力のひとつ。彼のお眼鏡に適うだけあって、このデビュー作もボーダーレスな傑作となっている。ヒップホップの音像で仕上げられながら、ありとあらゆるビンテージで良質な音楽が混じり合い、どこか夢心地でサイケデリックな香り漂うサウンド。そして全曲の制作を自ら手がけ、妖艶かつキュートな歌声で奏でるメロディがこれまた絶品。「伝説のオールド・スクールと、才能あふれるニュー・スクールとをブレンドしたい」と語る彼女が集めたゲスト陣は、タイラーはもちろん、まさかのブーツィー・コリンズ、さらにジ・インターネットのギタリストでソロ作も素晴らしいスティーヴ・レイシー、サンダーキャット、テーム・インパラのケヴィン・パーカー、ゴリラズ〜デーモン・アルバーン、ジョルジャ・スミス、レイコン、グレッグ・カースティン、などなど。この人選からも彼女の非凡なセンスが伝わることだろう。これはCDもレコードも欲しくなる名盤だ。(片寄明人)
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