終わらない夏休み、10年後の痛み

神聖かまってちゃん『ツン×デレ』
2018年07月04日発売
ALBUM
神聖かまってちゃん ツン×デレ
結成10周年を記念した9thアルバムは、“33才の夏休み”から始まる。“23才の夏休み”から10年。今も変わらずやりきれなさを抱えて生きる現実が描き出され、キラキラのロックンロールにのる《失っていくんだもっと僕は色々と》という歌詞が、本気で胸を締め付けてくる。年月がいろいろなものを奪い、不必要なものだけが背中にのしかかるどうしようもない現実をの子(Vo・G)は歌う。苛立ちは諦念にも変わるが、悲しみや辛さが完全に癒えることはないという思いが、年を経るごとに確信へと変わってしまうよう。だからこそこのアルバムはとてつもなく切ない。しかし“決戦の日”では《逃げたら次があるさちゃんと逃げて/それがダッセえって んなこたねえから》と、痛みを歌にし続けてきたの子だからこその強さも見せる。不器用な足掻き方さえもさらけ出す歌に、心を揺さぶられないはずがないのだ。リーガルリリー・たかはしほのかをゲストボーカルに招いた“秋空サイダー feat.たかはしほのか”にも注目。浮遊感のある歌声が、虚無感とそこに少しだけ滲む希望とを描く。素晴らしい共演。(杉浦美恵)
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