透徹した「NOW」への意思

R+R=NOW『コラージカリー・スピーキング』
発売中
ALBUM
R+R=NOW コラージカリー・スピーキング

ロバート・グラスパーはジャズにヒップホップやクラブ・ミュージック、R&Bをミックスすることでジャズを更新した今世紀の重要なミュージシャンだが、そこでのポイントは、90年代以降のクラブ・ジャズもサブジャンルではない「ジャズ」として吸収されているということだ。彼の主要なバンドのひとつであるロバート・グラスパー・エクスペリメントのリズム感覚は、プログラミング以降の複雑なビートを生演奏に落としこんだ現代的なもので、それは結果としてジャズ的即興の価値観を新しくすることになった。

新プロジェクトであるR+R=NOWはそのグラスパーを筆頭に、ケンドリック・ラマー作品のプロデュースで知られるテラス・マーティン、エクスペリメントに参加していたデリック・ホッジやジャスティン・タイソン、新世代スター・トランペッターのクリスチャン・スコット、そしてDJやビートボクサーでもあるテイラー・マクファーリンが集まった、いわばオールスター・バンドだ。ここでもジャズ以外のジャンルにアクセスできるメンバーが揃っているわけだが、なかでもキーになっているのは、フライング・ロータスが主宰するレーベル〈ブレインフィーダー〉からのリリースで知られるマクファーリンの存在だろう。LAビートとの近接がそこここに感じられるのだ。アルバムの総体としてはフュージョン色が強く、ヒップホップで育った世代による70年代フュージョン探訪といった趣だが、とりわけ中盤、IDM的な音処理や10年代アンビエントの風合いを発見できる。モダンなエレクトロニック・ミュージックが手法としても感性としても洗練された状態で入りこんでいるのだ。スーパー・バンドというと、ともすれば気の合う仲間による緩いものになりがちだが、ジャズ以外のリスナーにもアプローチする現代性はここでもしっかりと担保されている。

加えて本作にアクチュアリティがあるのは、ゲスト・ボーカリストを迎え、歌やラップで分断を乗り越える愛が掲げられていることだろう。これは明らかにブラック・ライブズ・マター以降のアメリカの情勢にグラスパーが応えたものだ。あるいは、女性の強さをアマンダ・シールズがチャーミングに訴える“彼女=現在”のようなトラックはもちろん、現在再燃するフェミニズムに誠実にシンクロするものであるだろう。

本作は一流の演奏者たちによるスタイリッシュなジャズ・アルバムだが、趣味として心地よく浸るためのものではない。新しいジャズの音でもって、「現在」に真摯に対峙する実践に他ならない。(木津毅)



『コラージカリー・スピーキング』の詳細はこちらの記事より。

R+R=NOW『コラージカリー・スピーキング』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」8月号に掲載中です。
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R+R=NOW コラージカリー・スピーキング - 『rockin'on』2018年8月号『rockin'on』2018年8月号
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