マジカルな記憶の幻覚剤

ザ・フレーミング・リップス『グレイテスト・ヒッツ、VOL. 1』
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ALBUM
ザ・フレーミング・リップス グレイテスト・ヒッツ、VOL. 1

サイケとはなんと果てしない道だろうか、と。リップスが35年に及んで繰り返してきた酩酊と瞑想と思索のアート・ポップは、様々に姿を変えながら人生や愛、世界の有様を探求してきた。ドラッグや別離で時折道を踏み外しそうになりながらも、それはいまも続いている。

バンド初となる公式ベスト盤。ワーナー移籍後のシングル11枚をまとめているのはもちろんのこと、CD版はB面曲や未発表曲も収録した3枚組の大作である。長年のコラボレーターにしてリップスの腹心ことデイヴ・フリッドマンの手によってリマスタリングされているのもポイントだ。初期のジャンクなガレージ・ロック〜中期のソフト・サイケ〜近年のダーク・アンビエントまでを一作に収めているので音の振れ幅はとんでもなく広く、フワフワと調子っぱずれなサイケデリック・ポップを繰り広げてきた彼らの凄みを濃縮して味わうことができる。もちろん“レース・フォー・ザ・プライズ”など誰もが愛するポップ・ヒット・ナンバーもあるが、ズブズブと沈みこむような危険なトラックも共存している。なぜなら、そのどちらもリップスの真実だからだ。

そう、真実――永遠の名曲“ドゥ・ユー・リアライズ??”が端的に宣言する通り、世界のすべての生命を祝福することにこの稀代のカルト・バンドは情熱を傾けてきた。奇天烈なセットで繰り広げられたこの世の終わりのパーティとしてのライブ。シュールに壊れたポップ・アート。血糊と紙吹雪。人間の実存に目も眩むような光を当てれば、そこに深い闇も生まれた。ここにはその壮大なトリップの記憶が渦巻いている。すべて聴き通すにはそれなりの覚悟が必要だが、これを体験したリスナーはそれまでと違った人間へと変身しているだろう。(木津毅)



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ザ・フレーミング・リップス『グレイテスト・ヒッツ、VOL.1』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」9月号に掲載中です。
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ザ・フレーミング・リップス グレイテスト・ヒッツ、VOL. 1 - 『rockin'on』2018年9月号『rockin'on』2018年9月号
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