ロック界一の働き者の久しぶりの本格的アルバム。5年ほど前にザ・ルーツとの共演盤があったが、“&ジ・インポスターズ”名義のオリジナル・アルバムとしては『百福』以来8年ぶりで、この人の場合、これだけ長いインターバルを取るととてつもない傑作をぶつけてくるのがお約束。今回もみごと、そんな期待に応えてくれた。
もっともビートルズ色が濃くなった名盤『インペリアル・ベッドルーム』(82年)のエモーションに、バート・バカラックとの共作『ペインテッド・フロム・メモリー』(98年)の美しさを持つ作品と言っているが、まさにその言葉どおり、3曲をバカラックと一緒に書いてたりUKロックのエッセンスを正統的に受け継ぐコステロらしいフックの効いたメロディアスなナンバーありと、多彩なアルバムとなっている。
特徴的なのは、ライブで披露されたり映画に提供するなどしてかなり前からマニアにはよく知られてきた曲を正式に取り上げていることで、映画『グレイス・オブ・マイ・ハート』(96年)に提供した“アンウォンテッド・ナンバー”などは、ようやくコステロのカタログに並んだことで喉の小骨が取れた感じだし、その映画のモデルとなったキャロル・キング本人と共作(!)した“バーント・シュガー・イズ・ソー・ビター”も、この二人の作品を知れば知るほど無限の魅力がわき上がってくる曲で、こうしてアルバムの中に固定されたことでさらに広く聴かれるようになるだろう。
こう書くと古い引き出しから集めてきたような印象を持たれると困るが、あくまでもこのアルバムの構成と演出を考えていったときに最適なピックアップがなされたということなのだ。さすがコステロ、じっくりと聴き込める喜びがじわじわとわき起こってくる。(大鷹俊一)
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エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ『ルック・ナウ』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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