愛の温もりと世界への畏怖

RADWIMPS『アルトコロニーの定理』
2009年03月11日発売
ALBUM
RADWIMPS アルトコロニーの定理
優れたロックを聴くことで、僕らはそのアーティストにしか見ることが許されない特権的な「世界」に触れることができる。RADWIMPSの音楽とはまさにそれだ。少なくとも彼らの音楽を聴いている間、僕らは野田洋次郎と同じ眼球を持つことができ、同じ前頭葉を持つことができる。ただそれはものすごく幸せな体験であると同時に、身が震えるようなゾッとする経験でもある。5thアルバム『アルトコロニーの定理』は、そんな至上の「幸福」と究極の「畏怖」がギリギリの臨界点で同居する、紛れもない彼らの最高傑作である。

ますますタイトになるバンドの演奏。ますます強大な破壊力と鋭い論理性を帯びる野田の言葉。そしてますます純度が高まっていく無菌室のような「君」との世界。中でも圧巻はアルバム・ラストに収録された“37458”であろう。ミディアムテンポの美しい旋律にのせて歌われるのは、あまりにもシンプルな言葉で要約された世界の不条理と自己存在の限界。しかし全てが残酷に暴き出されても、この「世界」に僕らが希望を見出すことができるのは、RADWIMPSの歌が「愛」でできているからである。(徳山弘基)
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