最新アルバム『#5』後初となる新曲は、“abnormalize”以降
凛として時雨が幾度もタッグを組んできた『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの舞台版への書き下ろし主題歌。冒頭からレーザービームの応酬の如く不穏なリズムを刻むエキセントリックなノイズが、獰猛なバンドアンサンブルのドライブ感とせめぎ合いながら《僕は永遠にIでいられる?/偽装だらけのUtopia》という不安定な詞世界を鮮烈に映し出す。そして、《僕は誰のもの? もっと暴いて》と轟くTKの戦慄必至のハイトーン絶叫が、聴く者すべてのアイデンティティに揺さぶりをかけてくる。凛として時雨というバンドが構築してきた3ピースロックの音楽的統制を自ら破壊するかのような大胆なノイズ使いのアイデアによって、破壊やアンバランスすらも己の表現として体現してみせる――そんな彼らの驚愕のクリエイティビティを4分半のスペクタクルに結晶させた、どこまでも意欲的な一曲。透明と混濁の軋轢から怒濤のカオスと生命力を描き出してきた時雨の新たなフェーズを、そのサウンドの熱量と歌詞の強度から確かに感じることができる。(高橋智樹)