メジャーデビュー曲でフジテレビ系ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌だった“ノーダウト”は、Official髭男dismが多くの人々に知られるステップボードとなった。新曲“Pretender”は、同ドラマの映画版の主題歌であり、彼らのシングルでは初のミディアムナンバー。“ノーダウト”もそうだったが、ピアノの響きを活かした軽快なサウンドが、このバンドの基本イメージである。テンポがゆっくりの曲をシングルに選ぶのは、一種の挑戦だろう。

新曲は、別れの場面を音でしっとりと描く。他の可能性があったかもしれないと思う気持ちが、甘酸っぱいメロディで歌われる。バンドのコメントによると、夢の中でこれは夢だと気づく感覚を映画にみつけて曲が生まれたという。物語によりそうことで、わかっているのにわかりたくない、語り手自身の感情の深さを表現できたのだろう。軽快なばかりではないヒゲダンの別の一面を印象づける曲になっている。シングルにはアコースティックバージョンも収録されており、そちらは響きが生々しいので失恋の痛みをより強く感じる。（遠藤利明）