王者の歌に、余計な飾りはいらない

フレディ・マーキュリー『タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン』
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ALBUM
フレディ・マーキュリー タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン

1986年(クイーンが初夏に『カインド・オブ・マジック』を発表した年だ)、フレディ・マーキュリーは“タイム”というタイトルのソロ・シングルを発表した。元々は長年の友人であったデイヴ・クラークが手がけたミュージカル劇『タイム』のアルバム用に録音された2曲のうちの1曲で、今はフレディの死後に編まれたソロ名義のベスト盤でも聴くことができる。ファンの間で「隠れ名曲」と称されることも多い、歌い上げ系の感動的なバラードである。

ただ、現代の耳で聴くと、この“タイム”のアレンジは、少し「やりすぎ」でもあった。フレディのバックで数百人が歓喜のコーラスをしている風の仕掛けで、いわば“ウィ・アー・ザ・ワールド”の豪華版(ま、80年代の話だから!)的な狙いだったのだろう。けど、途中からエスカレートしすぎて、「もっとフレディの歌を聴きたいのに!」という気になってくるのだ。ソングライター&プロデューサーのクラークも同じ点を後悔していて、いつかやり直したいと長年願っていたそうだが、肝心のオリジナル音源が行方不明になっていた――が、昨年の春、それが奇跡的に発見された。タイム・イズ・ナウ。33年間の長い空白期間を経て、ついに「やり直しの時」が巡ってきたのだ。

というわけで、本シングルはフレディのボーカル&ピアノ伴奏のみという新アレンジで生まれ変わった新生“タイム”――その名も“タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン”である。余計な飾りをすべて取っ払ったことによって、フレディの歌はより広い空間の中で、より自由気ままに飛翔していく。コーラスの手助けなんかなくても、その歌声は、世界中の人々の思いをひとつに繋いでいく。シンプル・イズ・ベストとは、まさにこのことだ。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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フレディ・マーキュリー タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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