ついにフルで聴ける、ポール史上最強「距離チカ」ライブ盤

ポール・マッカートニー『アメーバ・ギグ [限定盤]』
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ALBUM
ポール・マッカートニー アメーバ・ギグ [限定盤]

2007年の初夏〜秋、ポール・マッカートニーは、普段の年なら絶対に演奏しない小さな会場を回る「シークレット・ツアー」を突発的に敢行し、世界4大都市で計6公演を行なった。ちょうどアルバム『追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル』の発表直後だったから、話題作りの一環という目的もあったのだろう。その中の一公演、LAのCDショップ〈アメーバ〉店内で行われた無料ライブの模様は全21曲がレコーディングされ、その後、さまざまな形態で(部分的に)発表されてきた。

まず07年に4曲入りのEP盤が発表された。それから3年後の10年に12曲入りのアルバムがイギリスの新聞『The Mail on Sunday』の購読者向け特典という形で配布された。さらに2年後の12年、今度は14曲入りのバージョンが、ポールの公式ウェブサイトのプレミアム会員特典として、期間限定でデジタル配信された……が、21曲収録のフル・バージョンはいつまでも出なかった。なぜかは知らないけど、謎の「焦らしプレイ」状態がずっと続いていたのだ。

でも、ついに報われる日がやってきた。本作は、07年の夏に〈アメーバ〉で演奏された全21曲を初めてフル収録した念願の一枚である。

ポールはこれまでにも多くのライブ盤を発表している。そんな中にあって本作の長所はというと、CDショップという小会場ならではの、圧倒的な「距離チカ感」に尽きる。ポールは09年に『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』というライブ盤も出していて、その大会場ならでは(メッツの本拠地スタジアムに10万人以上を集めた)の「スぺクタクル感」も感動的だった。でも、こっちの「すぐソコ感」もまた、それに負けない素敵な設定である。

曲の演奏も、いつもの大箱ライブと比べるとさらにテンションが高めで、そこがそのままアルバムの聴きどころになっている。“オンリー・ママ・ノウズ”とか、当時の最新作だった『メモリー・オールモスト・フル』からの曲は、バンドの演奏がまだ完全にこなれてない「試運転」感が、逆に会場のフレンドリーな雰囲気といい感じにマッチしている。ビートルズ時代のナンバーも、ここだとやっぱりロック全開なノリがよく似合う。“アイヴ・ガッタ・フィーリング”なんてもう、たまらなくいい。後半のセルフ・カバー・セクションの盛り上がりに至っては、もはやキャバーン・クラブ状態だ。

さんざん焦らされた。でも、待つだけの甲斐はあった。日本でもいつかこういうの、渋谷のタワレコあたりでやってくれないかなぁ。って、さすがに厳しいですか? (内瀬戸久司)



詳細はUNIVERSAL MUSICの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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ポール・マッカートニー アメーバ・ギグ [限定盤] - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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