ついに3年ぶりに帰ってくるグラストンベリー・フェスティバル。いち早く告知されていたソロアーティスト史上最年少ヘッドライナー、ビリー・アイリッシュに続き3月初め、今度は史上初、80歳代のヘッドライナー、ポール・マッカートニーが発表された。ケンドリック・ラマーと共にキャンセルとなった20年グラストンベリーのリベンジを果たすことになる。
しかも驚くのは、その前に『Got Back』と題して4月28日からLAやボストンなど計16回の北米ツアーを予定していること。18~19年に行った『フレッシュン・アップ』では“ア・ハード・デイズ・ナイト”に始まりザ・ビートルズ、ウイングスのナンバーも含め約36曲をプレイしているのだから、今回のツアーも同規模になることは間違いないし、これまでの例からするとおそらく最新アルバムの『マッカートニーⅢ』からもピックアップされるに違いない(“スライディン”あたりは確実か)が、いずれにせよ約3時間近く、ベース、ギター、ピアノをプレイしながらほぼ一人で歌いきるのだから呆れる。
ザ・ビートルズ時代からマイクがふらついたり、目の前を人がブラブラするような劣悪な環境下でもくさることなくプレイを続ける人だから心底、ライブが好きなのだろう。また、バンドもラスティ・アンダーソンを始め20年以上一緒にやってきているだけに、プレイ上の問題はなにもなくファンには最高のプレゼントとなるはずだ。
それだけにまったく観客層の違うグラストンベリーの反応が、じつに興味深い。『ザ・ビートルズ:Get Back』に続いて配信公開された『マッカートニー 3 ,2 ,1』は、あのリック・ルービンがMCとしてポールにいろいろザ・ビートルズ時代の楽曲やレコーディングの様子を訊く構成なのだが、まるで少年がヒーロー物語を聞くかのようなリックの様子がじつに微笑ましく、彼のような人にとっても特別な存在、というのに驚かされた。
グラストンベリーは、そんなザ・ビートルズ伝説がどこまで世代を超えているものなのかを見せつけてくれるだろうし、それこそコロナ禍や戦争を超えてのリスタートにふさわしい光景に思える。 (大鷹俊一)
ポール・マッカートニーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。