あいみょんという人間劇場
あいみょん『真夏の夜の匂いがする』
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SINGLE
愛という概念を通して、人間の欲望と、人と人が心からわかり合える瞬間を追求するようなあいみょんの歌は、一人称を「私」に限定せずクルクルと視点を変えながら、恋、セックス、愛すること、愛されることをまるっと歌で包んできた。人の間に横たわる愛の形と、その背面にある欲望を同じものとして綴れる筆致こそが、人を選ばぬ歌の在処になってきたのだと思う。そのうえでの“真夏の夜の匂いがする”である。暗黒劇かと思うヴァースを演出する、グニョッとしたシンセの音色。音数を絞り、湿った呟きのように響く歌。そして突如、ゴージャスな音色を纏いメジャー感いっぱいに開けるコーラス。そんなコントラストの高い展開に乗るのは、真夏にうごめく生々しい情欲と、インスタントな快楽に揺れてばかりの人間の割り切れなさだ。自分自身が人間情欲劇場の出演者のひとりになったかのようなシアトリカルなアレンジによって、彼女の歌の深奥にある生々しさと煌びやかさが、人間の同じ箱の中に持つものとして表現されている。「私」の歌というよりも「私もあなたも」の歌。スケールは増すばかりだ。(矢島大地)