その天才ぶりを改めて実感

プリンス『イマンシペイション/カオス・アンド・ディスオーダー/ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス』
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ALBUM
プリンス イマンシペイション/カオス・アンド・ディスオーダー/ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス

名盤揃いのプリンスのカタログでも90年代最大の問題作がこの96年の『イマンシペイション』。12曲入りCD3枚組でどの盤も60分という、どこか強迫的な作りでもある。タイトルの「解放」はそれまでのワーナーとの契約から脱したことを祝うものだが、この年にモデルでダンサーのマイテと結婚したことを祝う特別な作品でもあった。そのせいか、極度に磨き上げた完璧な作りの内容となっていて、このまったく狂いのない世界はプリンスのサウンドとしては新境地に近いものだったし、この境地は04年の『ミュージコロジー』以降の作品にも継承されることになる。

もちろん多くのファンがそれまでプリンスに求めたものはエキセントリックでエッジーなR&Bとロックで、そんなファンのためにもディスク3は比較的尖がった作りになっていて、ファン・サービスにも事欠いていない。プリンス史上初となるカバー曲も収録していて、どれも完成度が驚異的に高いのでこの物量にひたすら圧倒される作品だ。そしてプリンスとスタジオでずっと一緒に過ごすというのはこういう経験かも、とも思わせる、稀に見る不思議な性格を帯びた大作なのだ。

その一方、これと対照的なのがその約半年前にワーナーからリリースされた『カオス・アンド・ディスオーダー』。当時から捨て鉢なアルバムと目されていたが、今聴き直してみると、どれも天才的によく出来ていて、このやさぐれたロックな楽曲群はまさに当時のプリンスの気分なのだ。それにプリンスのこういうエッジが大好きな人が多いので、まさに今こそ聴き直すに値する貴重な音源集だ。

『ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス』は95年の名作『ザ・ゴールド・エクスペリエンス』のプロモ用に配布されたミックステープで今も市場価格40万円以上の代物。それがついに聴けるというものすごい目玉作品。 (高見展)



詳細はSony Music Entertainmentの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

プリンス イマンシペイション/カオス・アンド・ディスオーダー/ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス - 『rockin'on』2019年10月号『rockin'on』2019年10月号
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