計9ヶ月、全102公演の総決算として

アリアナ・グランデ『k bye for now (swt live)』
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ALBUM
アリアナ・グランデ k bye for now (swt live)

アリアナ・グランデにとってキャリア初の公式ライブ・アルバムとなった本作は、2019年12月23日にリリースされたもの。アリアナが同年3月にスタートした『スウィートナー・ツアー』の最終公演は12 月22日のカリフォルニアだったから、なんとツアー終了の「翌日」に配信されたことになる︱もう少しじっくり寝かせてもよさそうなものだけど、そのあっけらかんとした「スピード感」もまた、今のアリアナらしいところだ。もちろん、世界中のファンへのクリスマス・プレゼントという意味もあっただろうし、特に今回の『スウィートナー・ツアー』ではアジア公演が実現しなかっただけに、日本のファンにとってはなおさら嬉しいリリースだろう。

セットリストは最近リリースした2作のアルバム(18年の『スウィートナー』と19年の『thank u, next』)からが中心で、全32曲。それ以前のヒット曲(“デンジャラス・ウーマン”とか)もファン・サービスでこなしてはいるけど、今のアリアナのモード的には、やはりここ1~2年の間に発表したナンバーの方がずっとしっくり来ている。それだけ音楽的にも、テーマ的にも、自信作のアルバム×2だったのだろう。アリアネーター(ちなみに、アリアナのファン集団を指す総称です)たちの反応も熱狂的で、“7 rings”をはじめ、新曲でも大合唱が自然発生しているところが頼もしい。今のアリアナとアリアネーターたちは、ふたつでひとつの一体感なのだ。

今回のアルバムは、(最近のライブ盤にしては珍しく)DVDなどの映像素材はなく、「音源のみ」のデジタル配信という形態でのリリースとなった。そのため、ステージ上でのダンスが絡んだ演出や、アリアナの七変化ファッション的なビジュアル要素は、残念なことに、ここではいっさい確認することができない。

その代わり……と言うか、むしろそのおかげと言うべきかもしれないが、本作は、アリアナの歌唱の圧倒的な「治癒力」に酔いしれるには最高の1枚である。もともと2011年に18歳でデビューして以来、アリアナは歌唱力にはずっと定評があった。でも、実人生での数々のドラマ(マンチェスターでのテロ事件、元カレだったマック・ミラーのドラッグ関連死、フィアンセとの婚約破棄などなど……)を乗り越えてきた今の彼女は、純粋に「歌う」という行為だけで誰かの心を癒せる、真の意味の“ソウル・シンガー”に近づいてきているのかもしれない。ラスト前の“ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ”を聴きながら、ふとそんなことも思った。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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アリアナ・グランデ k bye for now (swt live) - 『rockin'on』2020年3月号『rockin'on』2020年3月号
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