鉱脈発見

ブロッサムズ『FOOLISH LOVING SPACES』
発売中
ALBUM
ブロッサムズ FOOLISH LOVING SPACES

マンチェスターのブロッサムズ、1年9ヶ月ぶりの3作目だ。プロデュースはザ・コーラルのジェイムズ・スケリーと、リッチ・ターヴィーのコンビがファーストから3作続けて手がけている。録音も前作と同じ、リバプールのパー・ストリート・スタジオ。サウンド面での大きな変化を求めなかったということだろう。

かといって本作に変化が見られないわけでもない。彼らが本作を作るにあたって参照したのは、トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』、U2の『ヨシュア・トゥリー』、プライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』だという。たとえば“If You Think This Is Real Life”や“Your Girlfriend”のクールでトライバルなファンク・ビートなどはトーキング・ヘッズに近い感覚があるし、“The Keeper”のゴスペル的な高揚感はプライマルに近いものがある。

とはいえブロッサムズのブロッサムズたる個性は揺るがない。甘いボーカルと垢抜けないがフレンドリーなメロディ、繊細なポップ感覚、80’s リバイバル的なレトロ感は、聴いてすぐわかるようなブロッサムズらしさが横溢している。録音場所が関係しているのか、その個性は、どう聴いてもマンチェスターというよりはリバプール・マージー・ビート、それもエコー&ザ・バニーメンやティアドロップ・エクスプローズ(ジュリアン・コープ)というよりは、ケアーとかアイシクル・ワークスとかロータス・イーターズとかペイル・ファウンテンズみたいな連中に近い。クールなかっこよさとかトレンドの一歩先を歩いているような先取り感覚というよりは、聴き手と共にゆっくりと歩いているような優しさと親しみやすさは、そうしたリバプールの先輩たちとブロッサムズが共有しているセンスと言える。

そんな彼らの良さが凝縮されているのは、実は本編の10曲ではなく、そのアコースティック・バージョンを収めたデラックス・エディションのボーナス・ディスクのほうだったりする。トム・オグデンの甘いボーカルとコーラス、生ギターやピアノを中心とした素朴だが温かいアンサンブルは、楽曲の素性の良さを完璧に引き立てている。そのサウンドは80年代~90年代のネオアコ~ギター・ポップそのもので、その少しノスタルジックな感覚は、彼らにふさわしい。これを聴いてしまうと、本編のいろいろ装飾を施したエレクトロニックなアレンジは、厚化粧でオーバー・プロデュースに思えてしまうのである。悪いこと言わないから、今後はこの路線で行こうよ。絶対そっちの方がいいって。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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ブロッサムズ FOOLISH LOVING SPACES - 『rockin'on』2020年3月号『rockin'on』2020年3月号
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