ジョンのミニマリズムの凄さがよくわかる楽曲集

ジョン・レノン『ギミ・サム・トゥルース.』
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ALBUM
ジョン・レノン ギミ・サム・トゥルース.

ジョン・レノン生誕80周年を記念する新しいコンピレーションとなるのが今回の『ギミ・サム・トゥルース.』。生誕70周年にリリースされた10年のベスト盤、『ギミ・サム・トゥルース』からは大幅に曲数が絞られていて、前回のCD4枚組から2枚組へとかなり聴きやすく、なおかつわかりやすい内容となっている。

さらに10年盤には収録されていなかった楽曲も取り上げられている。今回はオノ・ヨーコショーン・レノンによる選曲のようなので、今現在の時代的背景を反映させたところもあるのかもしれない。たとえば、『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』の〝アンジェラ〞などはその最たる例で、黒人の政治活動家のアンジェラ・デイヴィスの冤罪事件を糾弾したこの曲は10年盤には収録されていなかったが、今回収録されたのは、ここ10年来、警察による人種差別的な一般市民銃殺事件の横行が激発しているのを反映してのことだろう。あるいは今回は“アイ・ノウ”も新しく収録されていて、これは『マインド・ゲームス〜』の中でも、ジョンが自分の過ちを赤裸々に詫びる最も告白的なものなので、時期的に考えてもとても重要な曲だ。ジョンという人物の足跡を考える上でも、こうした楽曲は必要だという判断があったのだろうか。

いずれにしても、今回の目玉のひとつはアルティメイト・ミックスで、オリジナルのテープから音源を引っ張ってきて、それを修正、分解、リミックスしているということだが、もちろん、初リリース時の音像を厳密に守っていることは言うまでもない。ただ、音源のデジタル化以降、ジョンのソロ作品は、いずれも音圧的に影が薄い印象もなくはないので、そうしたところを補う趣旨もあったのだろう。その一方で、仕上げについてはアナログ機器で作業を進めることにこだわりまくったところなど、オリジナルから逸脱しないことを肝に銘じたということが窺われる。

しかし、嬉しいのは今回の曲順。10年盤の内容はテーマ別の選曲だったのに対して、今回は“平和を我等に”など一部を除いては、ほぼ時系列順に楽曲が並んでいて、ジョンの楽曲の歩みと文脈がとてもわかりやすく聴けることだ。こうやって聴いていくと、ジョンは常に、現在の自分を歌いながら、過去のわだかまりをしっかり探っていたことがよくわかる。それは愛に満ちている時もあれば、攻撃的だったり、意気消沈としたものだったりもする。しかし、どこまでもシンプルに自分の問題の核心に辿り着こうとするこの一貫した楽曲の姿勢が、ソロ期のジョンの凄さなのだ。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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ジョン・レノン ギミ・サム・トゥルース. - 『rockin'on』2020年11月号『rockin'on』2020年11月号
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