9月に出たデビュー・アルバムに続き、セカンド『天の守護神』もSA‐CDマルチ・ハイブリッド・エディションでリイシュー。前年にウッドストックの衝撃的なステージで一躍注目を集めたサンタナは、本作で初の全米1位を獲得。これまでに1000万枚以上を売り上げている歴史的名盤だ。シングル・カットされた〝ブラック・マジック・ウーマン〞は、フリートウッド・マックのカバーながら、サンタナの代表曲として認知されている。
1970年という年は、ビートルズが終わってしまったものの、ロック・ミュージックはさらに多様化を極め、イギリスでは『レッド・ツェッペリンIII』、『パラノイド』、『ファイアー・アンド・ウォーター』などハード・ロックが発展し、プログレも台頭。一方アメリカでは、シカゴがブラス・ロック、このサンタナがラテン・ロックをブチ上げた、というような熱い状況だった。
今回のエディションは、なんと言ってもオリジナルの4chミックス=クアドラフォニックの復活が目玉。パーカッションを多数フィーチャーしているという前提から考えても、サンタナがサラウンド向きな音楽であることはわかっていたが、実際に初めて聴いてみて、その効果の凄さにあらためて驚かされた。近年になってから5.1chにリミックスされた面白いアルバムもたくさんあるが、当時のまま再現したものの中では、最高レベルの出来だと思う。ちなみに、ニール・ジョーンのギターを含め、ステレオ版に入っていない音もいっぱい発見できるそうだ。
ここはひとつ、なんとか環境的な条件を乗り越え、より大勢の人々――できればサンタナとかよく知らなかったような人にも聴く機会を持ってほしい。マーズ・ヴォルタ以降のパースペクティブで向き合うと、プログレ的にも楽しめるのでは。 (鈴木喜之)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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