音楽に生き音楽で呼吸する才気

オレンジスパイニクラブ『非日常』
発売中
オレンジスパイニクラブ 非日常
あたかも呼吸と同じように自然に聴こえる詞曲が、そのまま生命の温度感と手触りに満ちていて、なおかつ音楽をアートや様式美としてではなく「生きている事実そのもの」のように体現できる、といったソングライターはごく稀に存在する。そして、オレンジスパイニクラブの楽曲の核を成すユウスケ&ナオトのスズキ兄弟は、まさにそんな非凡な才気に裏打ちされている――。1月発売の前作『イラつくときはいつだって』の“キンモクセイ”や“37.5℃”にも明らかだった彼らの魅力がよりいっそう明確な形で結晶した2ndミニアルバム。フォークとパンクとブルースとカントリーとロックンロールが、整合性よりもお互いの居心地の良さを最優先するかのように移ろい共存する音像の中に、《君は大股開いて/慣れた顔で初めての春を知るのさ》(“リンス”)、《手首を切って距離を測っても/おそらくあいつは浮かれないが》(“スリーカウント”)と随所に配置された「非日常」の場面。だが、それらの描写が鮮やかに「活きて」いるのは取りも直さず、彼らの音に偽りなき「日常」のリアルが確かに息づいているからだ。(高橋智樹)

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