キースにとって唯一のソロ・ライブ盤である本作は、もともとは1991年12月にリリースされた。でも、収録されているライブ自体は、そこから3年も遡る「88年12月15日」にLAで録音されたものである。
そもそも、キースは本作を発表するつもりはまったくなかった。ところがツアー終了から3年が過ぎた後も、音質の悪いライブ・ブートレグ(海賊盤)が売れ続けていたため、「ファンが気の毒」という話になり、対策として急遽リリースしたのが本作だった――言い換えると、わずか3年で、すでに「伝説化」していたライブだったんだ。
ライブの細かい内容については、ぐだぐだ解説するまでもないだろう。ロックという音楽の「神髄」を詰め込んだ、世界一ラフ&ルーズで、それでいて世界一ソリッド&タイトなロックンロール・ライブである。なによりも美しいのは、当時「新作」だった『トーク・イズ・チープ』からの曲と“ハッピー”や“コネクション”などストーンズでの持ち歌が、何の違和感もなく、ひとつの大きな世界を形成している点。初のソロだからと言って、よそいきの服じゃなく、すべてが自然体。そこがミックのソロとの違いだ。
今回のリイシューの目玉は、オリジナル版に未収録だったトラックが3曲も追加されたこと(ただし、ボックス・セットとデジタルのみの特典なので、ご注意を)。まず『トーク・イズ・チープ』収録の「残りの曲」だった“ユー・ドント・ムーヴ・ミー”。続いてファンがみんな大好きなTitsとAssの讃歌“リトルT&A”。そして極めつけはなんと、ビートルズの“彼氏になりたい”のカバー――レノン&マッカートニーとの夢の“共演”だけど、キースの無邪気に楽しそうなご様子と言ったら、これがもう!(内瀬戸久司)
各視聴リンクはこちら。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。