危うさが生む逞しさ

夜の本気ダンス『PHYSICAL』
発売中
MINI ALBUM
夜の本気ダンス PHYSICAL
頭からラストまで、見知らぬ世界を彷徨っているような気分だった。不可思議でいて小粋で、夢うつつにしては躍動感があり、知らないのに知っているようなリアリティもある――ここでひとつの仮説が立った。これは2020年の夜ダンの心臓から生まれた理想の未来であり、逃げ込みたい場所であり、逃れられない闇なのではないだろうか。昨年発表したデジタルシングル2曲を含む6曲入りミニアルバム。珍妙でシニカルなムードを放ちつつもサビではピュアな情熱を垣間見せる不整合さが中毒性を生む“empty boy”、シリアスでありながらおどけた空気感も内包する違和感が妙に心地好い“Melting”、極上にポップでありながら現実逃避的な虚無感を孕む“SOMA”と、アルバム曲には相反する要素が複雑に絡み合った楽曲が揃う。だがどんな想いが混在しようとも“insomnia”の歌詞にもあるように《まだ未来は消えちゃいない》と思う限り、この肉体は《題名の無い衝動が騒ぎ出す》ものだ。未来への英気を情緒的に養うためにはポジティブもネガティブも不可欠であることを教えてくれた気がする。(沖さやこ)

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