現在イギリスで活況にあるポスト・パンクだが、00年代中頃にもフランツ・フェルディナンドをスターとしたポスト・パンク・リバイバルがあった。そのさなかに登場したマキシモ・パークは、XTC譲りのダンサブルなパンクとブリットポップ的なキャッチーさを手際よくミックスしたデザイン力の高さで評価されたけれども、ともすればそれがそつのなさに見えていた部分もあったかもしれない。スタイル主義ではないのか、と。しかし、彼ら自身はハイプに振り回されずにコンスタントに作品を発表し続け、同世代のバンドたちが離散していくなかで、ダンサブルでポップなパンク・ロックという基本路線を守り抜いたからこそ生き残ってきた。そのブレのなさこそが彼らの個性であり強さだったのだ。
キーボード担当のオリジナル・メンバーであるルーカス・ウーラーが脱退し、トリオ編成となった7作目。オープニングの“Partly Of My Making”のドラマティックなストリング・アレンジに開放感と自信がこめられているように聴こえるが、バンドとしての変わらぬ安定感をアピールする内容だ。リズム・セクションの跳ねとシンセやギターの装飾パートで繰り広げられるファンキーなやり取りが楽しく、その構築力の高いポップは健在だ。
「自然がつねに勝つ」というタイトルは生来の性質か環境からの影響による変化のどちらが強いかの議論が基になっているそうだが、それはアイデンティティが厳格に問われた近年の社会に対する応答だろうし、と同時に、マキシモ・パークというバンドが持つ芯に対する自負でもあるだろう。トレンドの移り変わりが激しい音楽シーンにあって、どのように自分を貫けるか。中堅バンドとしての心意気が感じられる1枚だ。(木津毅)
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