没後10年。最後の発掘音源か?

ゲイリー・ムーア『ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット』
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ALBUM
ゲイリー・ムーア ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット

2011年2月に58歳という若さで他界した情念のギタリスト、ゲイリー・ムーアの未発表スタジオ音源集。没後10年を経てようやくの登場という事実からうかがえるのは、ライブ以外の秘蔵音源がきわめて少ないのだろうということ。年月の経過とともにハード・ロックからブルースへの移行、そしてアイルランド出身ならではのルーツ回帰の傾向を強めていたが、本作に収録されている録音時期等の不明な全8曲も、そうした晩年の彼の音楽傾向と合致するものとなっている。

「どれくらいブルーになれる?」というタイトルだけでも泣けてくるが、これは収録曲のひとつであるB.B.キングのヒット曲の表題がそのまま掲げられたもの。他にフレディ・キングやエルモア・ジェイムスのカバーも含まれている。

また、1982年発表の『コリドーズ・オブ・パワー』当時の楽曲で、2002年に同作が再発された際にボーナス・トラックとして収録され日の目を見た“ラヴ・キャン・メイク・ア・フール・オブ・ユー”(85年に浜田麻里が別のタイトルを掲げてカバーしている)がブルース・アレンジされた状態で初収録されている点も見逃せない。

ただ、完全に別の曲に生まれ変わっているこの曲に触れた際にふと感じたのは、こうした自身のロック期の楽曲をブルースに変換する作業を晩年の彼は推し進めようとしていたのではないか、ということ。

もちろん新たな創作も、さらなる求道についても意欲的であったはずだが、そんな彼が存命であったならば今頃はどんな音楽を形にしていたのか? そう考えると気持ちも少々ブルーに染まってくるが、ここに詰め込まれた音色と歌声には生々しい体温と艶が感じられる。今さらながら、やはりこの損失は大きい。(増田勇一)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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ゲイリー・ムーア ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット - 『rockin'on』2021年5月号『rockin'on』2021年5月号
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