ゲイリー・ムーア @ SHIBUYA-AX

ゲイリー・ムーア @ SHIBUYA-AX - pic by YUKI KUROYANAGIpic by YUKI KUROYANAGI
この22日(木)の東京SHIBUYA-AX、続いて23日(金)にZEPP NAGOYA、26日(月)にグランキューブ大阪、そして東京に戻ってきて27日(火)にJCBホール、28日(水)に東京国際フォーラム・ホールA、という、全5本のジャパン・ツアーの1本目。ちなみに、80年代には何度も来日していたが、今回のこれは実に21年ぶりです。

まず、セットリスト、一番下に書いちゃいますので、知りたくない方は見ないでください。文中も、なるべく曲順に触れないようにしますが、後半だけ触れますので、そこも知りたくない方は、ここで読むのをやめていただければと思います。

それから、言い訳。このレポートを書いている私は、10代の頃、NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)ブームにはまってメタル好きになったものの、その後もっといろいろ聴くようになるにつれ、そしてミュージック・ライフからロッキング・オンへと買う音楽雑誌も乗り換えるにつれ、だんだんメタルから興味が離れ、Burrn! の創刊号を買ったあたりを最後に、メタルから足抜けしてしまった、転びキリシタンのような者です。なので、そういうハンパな奴が書いている、ということを念頭に置いて読んでいただければ幸いです。要は「こいつ真のファンじゃない」って怒らないでね。ということです。

あと、ゲイリー・ムーアが何者かご存知ない方は、各自で調査していただければ。ちょっとだけ紹介すると、80年代の洋楽シーンにおいて、へヴィ・メタル/ハードロックが流行った時期を代表する、ギター・ヒーローのひとりです。リッチー・ブラックモアとかマイケル・シェンカーとか、エドワード・ヴァン・ヘイレンとかランディ・ローズとかと並ぶ人です。もうちょっと時代があとになると、イングヴェイ・マルムスティーンとかジョン・サイクスとかスティーヴ・ヴァイとか、エイドリアン・ヴァンデンバーグとかジェイク・E・リーとかウォーレン・デ・マルティーニとか、ブラッド・ギルスとかジェフ・ワトソンとかが入ってきます。日本では高崎晃、シャラこと石原慎一郎、大谷令文、あと私はX-RAYの湯浅晋も好きでした。
さあ、これくらい書けば、もう脱落する方はしたでしょう。ではライブレポいきます。


まず。僕は今年1月に、マイケル・シェンカー・グループの来日公演に行ってレポートを書いたが(これ → http://ro69.jp/live/detail/29779)、その時と大きく異なる点がある。
マイケル・シェンカーは、全盛期当時、つまり80年代の曲をばりばりやってくれたが、ゲイリー・ムーアは1990年のアルバム『STILL GOD THE BLUES』から、ブルース方向に大きく音楽性の舵を切り、それまでの王道ハードロックな曲たちを、ほぼやらなくなってしまったのです。
2008年のアルバム『BAD FOR YOU BABY』は、ちょっとハードロック方面への回帰も感じられたが、基本的にはブルース作品。というわけで、往年の名曲たちを次々と……という期待は、できないわけです。
というわけで、二度のアンコールを含めて約1時間50分、全12曲のうち、スリーコードじゃなかった曲は、確か4曲ぐらいだけ。あとはもうひたすらスリーコード。速くなったり遅くなったり、激しくなったり渋くなったりのバリエーションはあるが、どの曲も、

イントロでギター弾きまくる→あの声でちょっと歌う→またギター弾きまくる→またちょっと歌う→本格的なギターソロ、もういよいよ弾きまくる

みたいな構成。まあ、言ってしまえば、全部一緒です。

ゆえに。後半、“Still got the Blues”あたりで合唱が巻き起こったのと、アンコールの一番最後に、79年の曲でありこの人を代表する大名曲“パリの散歩道”(当時の邦題で書いてみました)をやって、フロア&2階席から「おおおおおーっ!」とどよめきが上がって超盛り上がった時以外は、我々オーディエンスは、ただひたすらにギターを弾きまくる御大のプレイを凝視するのみ、という状態。ライブに参加、というよりも「鑑賞」に近い。

ただし。それがめちゃくちゃ楽しかったのだ。ギター、「衰えてない」ではない、もっともっとすごくなっている。いや、昔の来日、私は観ていないんですが、とにかくもう「うっわあすげえフレージング」「うっわあすげえ速さ」「うっわあすげえ音」「うっわあすげえ泣き」などなど、感嘆・詠嘆の連発でした。ばかでかいボリューム。泣きのトーンの時もディストーション・サウンドの時も、とにかくクリアで強い、音が。僕だけではなく、というか僕以上に、オーディエンスもものすごく盛り上がっていて、曲が終わるたびにすごい歓声と拍手。
にしても。聴いていると、この人が90年からブルースに移行したのは、「もっと本質的な音楽を追求したい」とか「ロックンロールのルーツに立ち返る」とかそういう理由ではなく、ただ単に「そのほうが思う存分ギターを弾きまくれる」というだけだったのではないか、とすら思えてくる。や、そんなことはないと思いますが。

この時代のギター・ヒーローの一部の人たちって、とにかくギターを弾きまくることを重視してつき進んだ結果、「曲のためにギターがある」んじゃなくて「ギターを弾きまくるために曲がある」「ギターを弾きまくるためにメンバーがいる」みたいな、言ってしまえば本末転倒な状態に陥っちゃったりする。前述の人たちでいうと、イングヴェイとかそうだと思う。10代の頃の僕が、だんだんメタルから離れてしまった理由のひとつに、そのへんの「音楽という目的よりもギターという手段のほうが大事になっている」ことへの違和感もあったんだろうなあ、と今になってみると思う。
で。今のこの、僕の目の前のゲイリー・ムーアって、正にその状態だった。その状態だったんだけど、楽しいのだ。面白いのだ。なんなのこれ。曲も、メンバーも3コードも、ブルースも、もうすべてが「自分が死ぬほどギターを弾きまくる」ための装置扱い。道具扱い、とすら言ってもいい。でも、それをとことんまで突きつめると何か別の次元に到達するみたいな、そして新しいエンタテインメントになっていくみたいな、そんな感じだった。
上手く説明できてないな、これ。でも、とにかく、満喫したということです。たぶんこのライブ、ギター小僧もしくは元ギター小僧以外の人が観ても、とても楽しめると思う。

終演後、東京の残り2公演のチケット、まだ売ってました。来週だし、間に合います。迷って入る往年のファンのみなさん、80年代の追憶にひたることはできないけど、もっと別の満足が待っていますよ。おすすめです。(兵庫慎司)


セットリスト

1.Oh Pretty Woman
2.Bad for you Baby
3.Down the line
4.Since I met you baby
5.Have you heard
6.All your love
7.More than you’ll ever know
8.Too Tired
9.Still got the Blues
10.Walking by Myself

アンコール1
11. The Blues is Alright

アンコール2
12.Parisienne Walkways
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