画期的ギタリストの追悼

V.A.『ザ・プロブレム・オブ・レジャー:ア・セレブレイション・オブ・アンディ・ギル・アンド・ギャング・オブ・フォー【限定盤】』
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ALBUM
V.A. ザ・プロブレム・オブ・レジャー:ア・セレブレイション・オブ・アンディ・ギル・アンド・ギャング・オブ・フォー【限定盤】

ギャング・オブ・フォーのデビュー作『エンターテイメント』のインパクトは強烈だった。ポスト・パンクを代表する同作は、ファンク、パンク、ダブの融合であり、なによりもアンディ・ギルのギターが革新的だった。ジャキジャキと異様に歯切れよく刻む演奏は、それまでのロックのギター一般と違う、時代を切断する音だった。

アンディは同作の40周年記念アルバムのリリースを考えていたものの、昨年、彼が亡くなったため、このトリビュート・アルバムへと企画が変更された。

本作はトム・モレロ&サージ・タンキアン、ヘルメット、アイドルズなどアメリカ勢やイギリス勢が多くを占めるが、ドイツ、ブラジル、スウェーデンからも参加している。2枚組のカバー集を聴くと、影響が広範囲だったことがわかる。ギャング・オブ・フォーのバンド名は、中国で文化大革命を主導した4人組に由来するが、同国のハードコア・レイヴァー・イン・ティアーズ(白紙扇)が中国語で歌っているのが興味深い。日本からは布袋寅泰のほか、スカル・ムラティがガムラン演奏で登場するのが意外性もあって楽しい。

選曲はバンドの特徴が目立った初期からが多く、同じ曲を複数がとりあげているので聴き比べると面白い。アレンジのポイントの多くは、やはりギター。なかでもフリー&ジョン・フルシアンテ、ゲイル・アン・ドロシー(デヴィッド・ボウイ後期のベーシスト。ギャング・オブ・フォーに一時在籍)が見事。

参加の大部分は後続世代だが、ポスト・パンクの同時代人もいる。ゲイリー・ニューマンはシンセ・サウンド、キリング・ジョークはダブでギャング・オブ・フォーの曲と向きあっている。ギターではなく自分たちの手法を押し出した点に、むしろ彼らの敬意を感じた。(遠藤利明)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

V.A. ザ・プロブレム・オブ・レジャー:ア・セレブレイション・オブ・アンディ・ギル・アンド・ギャング・オブ・フォー【限定盤】 - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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