力まない、急がない

yonige『三千世界』
発売中
EP
yonige 三千世界
ひとりの部屋でぼーっと耽る、考え事をしているような、していないような、無駄なようで、無駄じゃない時間が増えた。なかなか特別なイベントは発生しないけれど、逆に日常の大切さも知った。だからとりあえず、日々を生きている……そんな今の自分の気持ちに、あまりにフィットする心地好さに酔いしれた。yonigeのニューEP『三千世界』は、前作『健全な社会』で描いた「健全で普通」な世界を、そのままより深く掘り下げたような作品だ。サウンドはさらにシンプルにそぎ落とされつつ洗練された印象で、澄んだメロディと歌声が際立つ。OLのTwitterを覗き込んだような“27歳”をはじめ、肩の力が抜けた散文詩的な言葉たちが目にも脳にも優しい。

情報の速度も、流行する音楽のBPMも加速一方の時代とは、まったく別の次元にyonigeはいる。全編通してゆったりとしたリズムは、だからといって、いわゆるチルなムードではない。これは流れていく日々を生きるための正しい速度だ。淡々と、そして温かく、鼓動と呼吸の正しい速度を教えてくれるロックが、今こんなにも貴重だとは。(後藤寛子)

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