2022年初となる新曲で、クラレのCM曲として書き下ろされたデジタルシングル。作曲は小川貴之（Key・Cho）、作詞は片岡健太（Vo・G）。瑞々しい躍動感を備えたキャッチーな曲調であり、意味と響きを両立させた歌詞の弾け方が心地好い。『SOUND VILLAGE』収録の“Babel”もそうだったけれど、そもそもオーガニックなバンドサウンドを得意としていたsumikaが、同時代ポップのリズム感覚やサウンドデザインと和解しながら歩を進めている。「sumikaらしさ」の定義そのものをアップデートさせている印象だ。4つ打ちのイーブンビートから、フューチャーベース風アレンジを取り入れたコーラス、さらにはチェンバーポップ風パートまでが持ち込まれ、このキャッチーさを支える音楽的構造は決してシンプルではない。紆余曲折を経て見つけた価値を丁寧に配置することで、一見整然としたポップソングが生まれているのである。sumikaの提唱する“Simple”は、日々思い悩み、もがき苦しんでいるあなたを責めはしない。むしろ祝福している。彼らの歌も、そんなふうに生まれているからである。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』6月号より