冴えない境遇を描いたとしてもロマンチックな物語を浮き彫りにできる底力があり、切ないトーンのメロディにも乾いたフィーリングがあるこのバンドの音楽は、メソメソした悲観主義を瞬時に粉砕する熱量の塊だ。メンバーたちが往年のロックンロール、リズム＆ブルース、ガレージパンクから感じ取り、吸収したのがまさしくそういう要素なのだと思う。地中から現れたゾンビが腰を振りながら激しく踊っているイメージがありありと浮かぶ今作の1曲目“ROCKIN’ FROM THE GRAVE”は、多様な音楽が存在する現代でもロックンロールがリアルそのものであることを心の底から実感させてくれる。“STAND!”や“PINCH ME”は、奏でられるギター、ベース、ドラムの音に身を任せながら身体を揺らす快感が満載だ。そしてミッキー・ホークスの曲“BIP BOP BOOM”のカバーも収録されているのだが、これをきっかけとして原曲にも触れるリスナーがいたら彼らは大喜びするに違いない。「最高なものをみんなと共有したい！」というのが彼らの活動の原動力であることが、このEPを聴くと改めてよくわかる。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より