息苦しさを生きる力にするために

春ねむり『春火燎原』
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春ねむり 春火燎原
疎外感を抱くのは居場所がどこかにあると信じているからであり、絶望から逃れられないのは希望を捨てていないから――自分自身のことをそんな風に感じるリスナーがいるはずのアルバムだ。聖歌を思わせるハーモニーの多用も含めて、多くの人が本作を通じて感じ取るのは、息苦しい世界が覆ることを祈る姿だろう。看過できないことに対して声を上げるのも、愛しい存在に穏やかな眼差しを投げかけるのも、「美しさが尊重されてほしい」と願っている点で「祈り」であり、本作のあらゆる曲にはそういう姿が刻まれている。すべてに終止符を打つかのような破滅的なトーンの音や言葉も度々迫ってくるが、そこには瑞々しい生命の脈動が必ずある。そのことを感じさせる曲のひとつとして挙げておきたいのが“春火燎原”。《死にたいと思うのはなぜ/生きたいと思うのはなぜ》という問いかけには、破滅願望すらも自己肯定へと転じるための視点がある。不甲斐ないままであったとしても往生際悪く生き続けることこそが理不尽な世界に対する抵抗となるのだと感じられるこういう音楽こそ、真の意味での希望の歌だと思う。(田中大)

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