前作『おいしいパスタがあると聞いて』の1曲目“黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を”は、ポップスターとして広く知られるようになった
あいみょんの、今一度の所信表明のように聴こえてきた。そして、ラストの“そんな風に生きている”も、(フィクションかもしれないけれど)パーソナルな匂いがした。しかし、今作『瞳へ落ちるよレコード』の1曲目“双葉”はメッセージソングだし、ラストの“愛を知るまでは”も《今日も明日も生きて行こう》と私たちに呼びかけているようにも思える。つまり、今まで以上にリスナーの存在を感じながら作られたアルバムなのではないだろうか。自分が歌い鳴らす音が響く人が必ずいる――そんな確信を持って、堂々とポップスターのステージに立つ、今のあいみょんが刻まれている。とはいえ、細かすぎる恋愛模様を描いた“3636”、少年のエロ心が炸裂の“神秘の領域へ”、怒りをエンターテインメントに昇華した“インタビュー”など、躊躇なく「らしさ」も炸裂。演奏やアレンジも秀逸で、挑戦を楽しみ続ける姿勢も見える。ポップなのに刺激的な最強の一枚だ。(高橋美穂)
『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より