今月号のSCENEでも、映画『ブラックナイトパレード』主題歌の“白雪”について書いたが、本稿ではEveのリリシズム、そしてポップソング作家としての成長について掘り下げてみよう。Eveの作風は自らソングライティングを手掛けるようになった頃、とても繊細で内省的な、しかし内に秘めた強烈な表現意欲を感じさせる楽曲が多かったが、カルチャーのさまざまな場面で活躍する機会が増えてからは、より風通しよく、より広く遠いリスナー層にまで届くポップソングを数多く生み出すようになった。当初は少し驚いたが、すぐにこれこそが素のままのEveなのだ、と自然に受け入れられた。“白雪”は伸びやかで美しいコーラス部もキャッチーだけれど、実はその前の言葉とメロディが渾然一体となってスキップするような心地よいブリッジがめちゃくちゃいい。冬の寒さやどんより重い空よりも、心の率直な声に耳を傾け丁寧に音楽に変換することで、“白雪”という楽曲のムードを決定的にしている。Eveは、Eve自身の心の声を聴くプロフェッショナルであり、それこそがポップの最重要基盤になっているのだ。(小池宏和)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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