パンク・イズ・ノット・デッド

グリーン・デイ『21世紀のブレイクダウン』
2009年05月15日発売
ALBUM
グリーン・デイ 21世紀のブレイクダウン
前作『アメリカン・イディオット』で彼らが手にした圧倒的な成功と評価をもってすれば、どっしり構えた大人の、未来を祝福する大団円の良作を作ることも可能だったはずだ。世界を俯瞰して正しき道へと啓蒙する、そういう類のロック・アルバムを作ることも可能だったはずだ。しかも『アメリカン・イディオット』が発表された2004年が現代アメリカにとって最悪の時代、ブッシュ政権の折り返し地点に立っていたことを思えば、オバマを擁して新しいアメリカをスタートさせた2009年にリリースされる本作は、預言者=グリーン・デイの勝利宣言となっても構わない一枚だったはずだ。

しかしグリーン・デイは今回も徹頭徹尾、当事者の目線から「21世紀の崩壊」を歌う道を選んだ。ワーキング・クラス・ヒーローにすらなりえない、つまりパンクのクリシェを投げ捨てたジェネレーション・ゼロの地点で再び、混沌と絶望を射抜くパンク・ロックを鳴らすという、リセットの道を選んだ。だからこそ、このアルバムは『アメリカン・イディオット』を超える可能性すら秘めた傑作なのである。前作同様にロック・オペラの概観を擁し、コンセプチュアルで転調を多用した構成の作品ではあるが、本作の肝はそのコンセプトすらも崩壊させるほどの混沌であり、その混沌はもちろん世界の混沌と同義である。絶対的な敵が消えた今こそ、彼らは恒常的な敵と向き合おうとしている。パンクとは何か。まさかこの2009年に、その意味をど真ん中から問うアルバムに出会えるとは思わなかった。(粉川しの)
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