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いつの時代も数多のラブソングが世の中には溢れているが、その中でもなぜマルシィのラブソングがこんなにも多くの人に求められているのか。生活感溢れるリアリティで共感を集める歌が増えた邦ロックシーンの中で、吉田右京(Vo・G)が書く歌詞は普遍的で、どんな恋愛も受け止める包容力がある。にもかかわらず強烈なリアルを感じるのは、できる限りシンプルな言葉で、人を想う気持ちそのものを純度高く抽出しているから。まるで自分の心の中を覗かれているような感覚になる。《君》を失ってしまった後悔を歌う“凪”も、早く好意を伝えなければ誰かに取られてしまいそうでも勇気を出せずにいる“恋焦がれて”も、もどかしい気持ちや苦しさを明るみにする曲なのに、恋愛の美しさすら感じさせる。誰かに想いを伝えるとき、着飾った言葉より頑張って声にした「好き」という一言が胸に刺さるのと同じで、まっすぐに堂々と、恋愛がもたらすあらゆる感情を掬い上げてくれるから、マルシィは多くの人の心の拠り所となるのだろう。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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