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シングルのパッケージ作品としては『不思議/創造』以来、約2年半ぶり。表題曲のひとつ、2023年夏に配信リリースされた“生命体”は、この世に生まれ落ちたすべての生命が躍動し疾走する様をとても感覚的に表現した楽曲だった。命の意味を求める前に走り出せばいいと言われているような気さえした。そしてこのシングルの1曲目に収録された新曲、もうひとつの表題曲“光の跡”は“生命体”とは趣を異にする楽曲だが、そこで描かれるものは地続きにあると感じられる。アナログシンセやピアノのノスタルジックで柔らかな音像が連れてくるのは、いつかは朽ちていく生命が今生で心に刻む様々な景色、その追憶。誰もがいつかこの世から消えて無に帰するが、《消えてゆくのに なぜ/ただ 忘れたくない思い出を/増やすのだろう》と問うこの歌は、生の無意味さに対する嘆きではなく、意味など求めないからこその尊さに溢れる。聴くたびに寂しさとあたたかさに包まれて、もうこの世を離れていったいくつもの生命のことを思い出す。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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