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初のベストアルバム。まさにベストにふさわしい選曲で、全26曲のうち再録が3曲、新たなミックスを施したものが10曲。もはや「新作アルバム」のような2枚組だ。“Addicted To You(Re-Recording)”はディープハウス的なサウンドで歌声がより深遠に響き、“traveling(Re-Recording)”のビートやボーカルの刷新は楽曲を洗練されたダンスチューンへと進化させた。他にも言及したい楽曲ばかりだが、とにかく最新曲“Electricity”の素晴らしさに胸を打たれる。パーカッション、ピアノ、フルートなどオーガニックな音色が彩るスタイリッシュなサウンドに乗せて、アインシュタインが自身の娘に送ったという言葉を引用しながら、この星に生まれた真理をサラリと歌う。どこまでもスケールの大きなテーマを、抽象的ではなく明確に身近なものとして表現できるアーティストは数少ない。先にリリースされている“何色でもない花”も含め、ベスト盤でありながら宇多田ヒカルがたどり着いた美しい境地を示す、とても濃密な作品だ。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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