スティーヴ・アルビニと組んでの「ロック」なジャーヴィス!……それってどうなんだろ?と懐疑的になるリスナーは少なくないと思う。ジャーヴィスの声もソングライティングも、USオルタナ/グランジ的なサウンドとしっくりくるはずのものではないし。が、いざ聴いてみると、そういう細かいことは完全に忘れさせてしまうのだから、やっぱりジャーヴィスだ。
「人生はキャリーバッグのようなものだ」とさらっと痛烈に食らわしたかと思えば、不器用が過ぎて思わず赤面してしまうようなセクシュアルな表現が飛び出したりして、ともすれば「中年の危機」なんてばっさり斬られてしまいそう……。しかしそれらを飄々とやってみせるところに、彼の音楽がポップかロックかなんてどうでもいいことなのであり、ジャーヴィス=自己批評性の高いエンターテイナーという図式は崩れないのだなと納得させられる。歳を取ると落ち着くのは何も一般人に限らず、ときにポジティブに振り切れたりするアーティストも多いが、サウンドは若返っていても、表現者としての成熟が止まるわけではない。それがジャーヴィスの魅力だ。(羽鳥麻美)
この人はこの人である
ジャーヴィス・コッカー『ファーザー・コンプリケーションズ』
2009年06月24日発売
2009年06月24日発売
ALBUM