究極のプレイヤーズ・アルバム

ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ『ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ』
2009年12月02日発売
ALBUM
ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ
rockin'on2010年1月号のジョン・ポール・ジョーンズ・インタビューは彼の新バンド、このゼム・クルックド・ヴァルチャーズのプロモーションとして貰った貴重な時間だったのだが、関係各所に無理を言って調整してもらい、またジョンジー自身も非常に良い人だったお陰であのようにツェッペリンについて訊きまくるという偏ったインタビューが実現したわけなのである。本当にありがたい話なのである。ただ、面白かったのは結果的に今回のツェッペリン・インタューがゼム・クルックド・ヴァルチャーズの出発点をも端的に示すものになっていることだろう。つまり、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズは2年前のO2アリーナでのツェッペリン再結成ライブが無ければ、あのライブでジョンジーのプレイヤー魂に火が着かなければ実現しなかったスーパー・コラボだということ。そこにもともとドラムを叩きたくて仕方がなかったデイヴと、デザート・セッション等の経験でコラボ仕事にもともと意欲的なジョシュのラブコールが重なり、結果、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズはソングライター・エゴよりプレイヤー・エゴが先んじた特殊な「演奏場」たるバンドと化したのである。ドラム、ベース、ギターの見せ場をきっちり設ける古典的プレイヤー・バトルと平行して、曲作りの主導権を誰かが明確に持つことはなかったんじゃないかと思える即興的なプレイが続いていく内容。「ツェッペリンは曲ではなく演奏がベースにあるバンドだった」というジョンジーの証言を、より極端なかたちで示したのがゼム・クルックド・ヴァルチャーズであるとも言える。有形のアルバムよりも無形のライブにこそゼム・クルックド・ヴァルチャーズの本質はありそうだ。ライブで観たい。(粉川しの)
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