そこに彼がいた

マッシヴ・アタック『ヘリゴランド』
2010年02月03日発売
ALBUM
マッシヴ・アタック ヘリゴランド
秋にリリースされた予告編とも言えるデジタルEP『スプリッティング・ジ・アトム』で既に一部を体験していたとは言え、素晴らしいクオリティのアルバムである。一音一音の美しさが尋常ではない。音の解像度の高さが現存のシーンの中でも突出している。重すぎず軽すぎず、音の質量が、あるべき重みで鳴っている。そして、一音一音が、深い。問いを投げかけても、安易に答えを出すことはなく、問いだけをしっかりと受け止める、そうした音。数えてみれば既に20年以上の活動歴を誇るにもかかわらず、本作を含めてリリースされたオリジナル・アルバムが僅か5枚という寡作なアーティストだが、シーンや時代などというものを超えた存在感を持っている。そんな彼らが7年ぶりに新作をリリースする。

前作『100thウィンドウ』は、実質的には3Dのソロ・アルバムという側面があった。そして、本作では再びダディー・Gがスタジオでの作業にも復帰し、マッシヴ・アタックという共同体としての作品になった。けれど、今回、最も重要な役割を果たしたのは、例のバンドの再結成を実現させ、同時並行でゴリラズとしての新作も完成させていた英国一忙しい男、デーモン・アルバーンではないか。作曲や演奏でクレジットされているのは僅か3曲だが、バンド内の傷を癒し、マッシヴ・アタックという不朽の存在を全肯定するかのように機能している。特に本作のハイライト“サタデー・カム・スロー”のボーカルは感動的だ。今後発表予定のブリアルによる全編リミックス・アルバムも楽しみ。(古川琢也)
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