オーガニックで風通しのよいアコギの調べに、一瞬エコ/サーフ系のシンガー・ソングライターかと思ったら、英国出身の23歳だった。たとえばジェイムス・ブラントやジェイムス・モリソンなどの英国SSWを想像すると、少し違うのである。サウンドだけをとると、カリフォルニアのビーチ沿いから流れ出してくるのが似合うような、陽性のサウンドなのだ。そしてじっくり聴いていると、アコギ1本で一筆書きのように自然と生まれてくるようなサウンドともまた少し違うのだろう、と思えてくる。たとえば“U.F.O.”での、初期ベックを思い起こさせるようなローファイさやシタールの調べ。アコギの弦を激しく叩く奏法に合わせてメロディックなナンバーへと大胆にアレンジし直された、マッシヴ・アタック“ティアドロップ”のカバー。ブルーズやファンクを解体して、都市の喧騒のなかでもサバイブするサウンドへと磨きこまれた楽曲群。まるで、生き生きとしたバンド・サウンドが、実際には聴こえないけれども背後で鳴っているような、炙り出したらその音が出てきそうな、シンプルながらもイマジネイティブな音楽だ。(羽鳥麻美)
幾つもの風景に寄り添う歌
ニュートン・フォークナー『ハンド・ビルト・バイ・ロボッツ』
2008年06月25日発売
2008年06月25日発売