15年間、変わらぬ湿度
平井堅『Ken Hirai 15th Anniversary c/w Collection '95-'10 “裏 歌バカ”』
2010年11月10日発売
ALBUM
今年デビュー15周年を迎えた平井堅の、カップリング・ベスト全33曲。『裏歌バカ』のタイトルこそが象徴的だが、1曲ずつ聴き返して思うのは、この人にはつくづく裏も表もないんだよなあ、ということ。つまり、いわゆるB面集によくある「実験」や「ガス抜き」の感じ、一切なし。堂々とポップで、いい歌で、シングルに引けを取らない名曲ばかり。そして、小さなオルゴールに別れた恋人への未練を歌う95年の“オルゴール”から、届かぬ想いを太陽の炎で狂おしく焦がす今年の“太陽”まで、とにかく一貫しているのは、彼の描く歌詞の独特の湿り気だ。そこに描かれる「僕」は、いつも人生に悩み、傷つき、愛と性のままならなさに身悶えしている。日本人離れした歌唱力とルックスの中に潜む、本当の彼を伝える体温と息遣いこそが、その正体だろう。時代の空気を思いっきり受け止める最高のポップソングを目指しながら、同時にプライベートな自分を決して偽らないこと。そんなチャレンジを彼が続けていることの奇跡に、改めて頭が下がる。同日発売のシングル『アイシテル』、これも泣ける名曲。(松村耕太朗)
2010.11.14 20:45